大学院留学前に途上国の姿を見ておきたい
私は都内で理学療法士として働いていました。
ボランティア活動の団体を探し始めたきっかけは、途上国支援を学ぶために海外の大学院留学を決めたことでした。
私はこれまで、所謂「途上国」と呼ばれる国々に行ったことがなかったので、自分が学びたいと思っている人々がどのような生活をしているのか、肌で感じたいという思いがありました。
そして、どうせ行くなら、ボランティア経験を留学先での学びに活かしたいと思い、興味のある「障害児支援」ができる団体を探したところ、プロジェクトアブロードを知りました。
プロジェクトアブロードにした決め手は、活動開始日・期間が自分で決められること、理学療法士として活動できるプログラムがあることでした。
理学療法プロジェクトが行われている国は、相談した当初、6か国あり、渡航費用が安く、且つ旅行で行く可能性が低そうだと思ったネパールを選びました。
4週間の活動で学んだこと
私は4週間、理学療法プログラムに参加しました。
カトマンズからバスで6~7時間離れた場所にあるチトワンに滞在しました。
チトワンにある、大学が隣接する大きな病院で活動が始まりました。
ネパールの理学療法士はインドの大学で勉強する人が少なくないようで、医療用語は全て英語で学んでいました。
活動先の病院の理学療法士は、ICU、CCUなどの集中治療室、整形外科病棟、外来患者を診ていました。
彼らは医師と共に回診したり対等に意見交換したりと、理学療法士としてのプライドを強く感じ、刺激になりました。
しかし、私の希望する活動内容ではなかったので、現地のスタッフに相談したところ、別の活動先を提案していただき、障害児が通う学校で活動しました。
学校では、小学生から中学生の子どもが一緒に授業を受けていました。
午前中は教室で座学、午後はダンスまたはリハビリの時間がありました。
学校での活動としては、授業中の姿勢を介助や校内の歩行・階段昇降の介助、学校の先生が行うリハビリのサポート、リハビリメニューの作成・提案をしました。
学校の先生は皆温かく迎えてくれ、昼ご飯を一緒に食べながらネパール語を教えてくれたり、ダンスに混ぜてもらったりしたことは大切な思い出です。
子どもや学校の先生は英語がほぼ話せないので、簡単な英単語での会話、ジェスチャー、スマートフォンの翻訳アプリを駆使してコミュニケーションをとっていました。
渡航前に少しでもネパール語を覚えていれば、もっと彼らと会話ができただろうなと後悔しました。
また、活動先の学校の校長先生がチトワンの中心地から離れた地域に連れて行ってくれたことがありました。
そこでは、学校に行くことができない障害のある男の子と出会い、私にとって衝撃的な経験でした。
後半の2週間は学校での活動に加え、他国からのボランティアと共に別の病院でも活動し、見学だけでなく、実際に理学療法を行う機会も多くいただきました。
日本では多くの患者さんに作成する装具や体にフィットした車椅子はありません。
補装具がない中で、徒手療法や物理療法、鍼灸、アーユルヴェーダを組み合わせて治療しており、日本との共通点や相違点を知ることができました。
山あり谷ありネパール生活
ネパール人のご家庭にホームステイをさせていただき、他のボランティアとルームシェアをして生活しました。
朝は5時半過ぎに起床し、7時頃に朝食、8時から活動し、16時頃に汗だくで帰宅、即シャワーを浴び、19時頃に夕食、21時過ぎには就寝という健康的な生活を送っていました。
滞在していた6月から7月のネパールはちょうど雨季に入る頃で、夜中に雨が降り、時々一日中降ることもありましたが、すぐに止むことが多かったです。
日本とは少し異なる「じめじめとした暑さ」で、活動中に着た服は一日が終わると、毎日ドロドロに汚れていました。
昼休みに汗拭きシートやドライシャンプーを使ってなんとか乗り切っていました(日本から持参してよかった物の一つです)。
現地で最も辛かったことは、食中毒になったことです。
魚介類は注意です。
特に少しでも体調が優れない時は食べないことを強く勧めます。
現地スタッフが病院に連れて行ってくれたり、苦しむ私に付き添ってくれたりと本当に良くしてくださり、有難く心強かったです。
他国からのボランティアは、イギリス、スイスから学生が来ており、共に活動する以外に、週末は一緒に観光に行くこともありました。
違う国の人と笑い合っていた自分に驚き、感動し、嬉しかったのを鮮明に覚えています。
現場に向かう価値
たった4週間でしたが、私にとって大変貴重な体験でした。
特に、チトワンの中心地から離れた地域で出会った、学校に行けない障害のある男の子は、一生忘れないと思います。
日本では当然のように病院で治療を受け、学校に行くような子どもでした。
病院に行くよう伝えても、親御さんも学校の先生も、特に手は打たない様子だったことが悲しく、無力感を感じました。
外国人のボランティアができる限界を痛感しました。
この4週間で私が見たものは、途上国に住む障害児・者の現状の極、極一部にしかすぎないけれど、それでも実際に現地に行くことで沢山の気づきと自分自身の課題を得ることができました。
これから先、携わっていく「途上国支援」のスタートラインに立った気がします。
お世話になった日本のスタッフ、ネパールのスタッフの皆さま、活動先で出会った学校の先生・理学療法士・患者さん・子どもたち…全ての方に心から感謝申し上げます。
これから参加する方へ
ネパール訛りだけでなく、色々な国の訛りのある英語に苦戦し、自分の言いたいことが思うように伝えられないもどかしさを経験したり、文化、環境の違いに戸惑いながらの4週間、楽しいことばかりではありませんでした。
ですが、異国の地でするボランティア活動は、間違いなく自分の視野を広げ、価値観が変わる経験になると思います。
この体験談は、主観に基づいて綴られています。
その時の現地の需要や活動の進捗状況、参加時期、参加期間、天候などによって得られる経験が異なりますので、あらかじめご了承ください。
ご不明な点は、お気軽にお問い合わせください。