「世界の教育格差」と「途上国の人々の生活」を探求したい

皆さんはタンザニアという国を聞いたことがあるでしょうか。

インド洋に面しており、アフリカの中では比較的発展を遂げている国の一つです。

私は幼いころから世界の国々に関心はありましたが、世界的にあまり発展を遂げていないような国々、それこそタンザニアなどのアフリカや東南アジアに興味を持ち始めたのは中学生くらいからです。

国際理解教育などをきっかけに国際問題にも興味を持ち、今では世界における貧困や国家間の関係について大学で勉強しています。

ところが、ただ机の前に座って話を聞くだけでなく、もっと深く知るために実際に自分の目で確かめたいと思うようになり、なにより自分の身体で感じてくることが国際問題を学ぶ上での一番の方法ではないかと考えました。

また、将来はそのような諸問題に携わり、少しでも多くの人を救いたいと考えているのですが、選択肢がいくつかあり、まだ決めかねているという個人的な課題があったこともひとつのきっかけです。

今回は“世界の教育格差”と“途上国の人々の生活”をテーマに発展途上国の探求へ行くことに決め、そこで大学から紹介されたのがProject Abroadでした。

大学の単位に算入できる国がほとんど東南アジアだったため、当初はそのつもりでいたのですが、Project Abroadのホームページを見て、ずっと興味のあったアフリカへ行けると知りました。

また、自分の住んでいるアジアよりも、全く違う地域でマイナーな国に行く方がより多くの学びを得られると思ったので、タンザニアを選びました。

アフリカへの誤解

アフリカと聞くと、ほとんどの人が貧困や衛生環境の悪さなどを思い浮かべると思います。

私も渡航する前は、そのような印象を持っていました。

確かにその通りではあったのですが、実際に行ってみるとそれ以上に複雑な事情が絡んでいることを知りました。

この体験記では、前半にアフリカの教育現場における自分の経験や現状、課題、後半ではアフリカの生活とそれを通して学んだ人々の価値観、今後の人生へどう活かすか、そして最後にこれから参加する方へのアドバイスについてお話します。

自分なりに工夫を凝らした活動を

今回、私が活動したのはマサイスクールというところです。

もちろんと言っては少し失礼かもしれませんが、設備はやはり日本の方が充実しており、現地の学校は、例えば職員室はないに等しく、グラウンドはほぼ整備されていません。

加えて、遊具を囲う柵は壊れたままで、電気もプリンターもないため教材をボランティアがその都度、手書きで作成するなど日本では考えられない環境が広がっていました。

現地で実際に行ったプランとしては足し算やアルファベットをメインで教えることです。

渡航前、現地での自身で行う教育活動のプランとして、折り紙や日本の文化を教えようと準備をしていました。

ですがせっかくなら少しでも授業の質を、現地にはない技術によって高められたらと考えました。

そして実際に足し算を教えるときに、自分のパソコンでPower Pointを作成し授業に取り入れたところ、現地の先生からが子供たちの理解が早まったとおっしゃっており、また自分としても子供たちの学びに対する興味を少しでも高められたのではないかと思っています。

このように、私たちと同じような環境が完全に整っていなくても、小さな工夫一つで新たな発見や解決への道を開けると実感できたことが、このプログラムを通じての一つの喜びでした。

片道数時間かけて通うマサイ族の子供たち

マサイスクールというのは、日本でいう幼稚園にあたります。

ホストファミリーの家からは車で4,50分走ったところで、場所はなんとサバンナの中です。

そのため我々ボランティアは、Jeepという、舗装されていない道でも走れる車にサバンナに入る場所で乗り換えます。

ですが子供たちは、そんな広大なサバンナの中の小道を辿りながら毎日歩いて通っています。

人によりますが、遠い子だと片道2~3時間かけて歩くそうです。

これにはもちろん近くに教育施設がないことが一つの理由としてあり、日本でも過疎化が進んでいる地域では同じようなことが起きている訳ですが、タンザニアの場合、サバンナでなくとも道路が舗装されていない場所が少なくないため、日本のように自転車やスクールバスなどを走らせることが容易ではありません。

また、国がそもそも貧しく、学校を新しく建てたくても建てられないという現状があります。

マサイ族の子供たちの食生活

そんなマサイ族の子供たちの生活ですが、一日だけいろんなご家庭を訪問する機会をいただいたので紹介します。

まず、食事ですがタンザニアの比較的発展している地域に住んでいる人々のように一日三食の十分な食事が摂れないことは想像に難くないかもしれません。

空腹状態で学校に通う子も多く、マサイスクールでは、木の枝や紙を食べ始めてしまう子も中にはいました。

食事のメニューは基本的にはほうれん草と豆を塩で少し味付けしたもの、あるいは小麦粉、水、砂糖を混ぜて作ったポタージュのようなものを一日一食で生活しています。

前者はおかずとしても割と楽しめそうで良かったのですが、後者は決して味があるわけでもなく、正直言ってしまえばおいしくなかったです。

このような極度の貧困状態にある子供たちを援助するため、マサイスクールでは週二日で我々ボランティアが食材を市場で購入、調理して子供たちに提供する機会を設けました。

また、このような貧しい生活をしているマサイ族の中には、仕事がないという人もたくさんいます。

そのため、毎日食べられるわけではないものの牛や羊を放牧して食料を確保したり、オアシスまで水を毎日汲みに行ったりするなどして生活しているそうで、もはや究極の自給自足と言っても過言ではないかもしれません。

ちなみにオアシスの水は衛生的に良くないそうで、飲み水は乾季には干からびた川を掘って地下から得ているそうです。

発展途上ゆえのタンザニアの問題

一見この話を聞くと、マサイ族=全員貧しい、というイメージを持たれるかもしれませんが、そうではありません。

街中には家、水道、電気、ガスを持ち、一日三食の生活ができているマサイ族もいます。

ではなぜここまでの格差が生まれてしまったのでしょうか。

実は、ここまで述べたような生活をしているマサイ族の人々というのは、もちろん社会進出が難しいことも一つの理由としてあげられますが、もう一つ、昔からの伝統を受け継ぐため、という理由があるそうです。

一概に世界の貧困問題を解決したいといっても、それが必ずしもプラスに働くわけではないということをこの訪問を通じて感じました。

では、マサイ族以外の人々はどうでしょうか。

彼らは、マサイ族のように伝統を受け継いでいるわけではなく、主に教育システムや国内の産業が関係しています。

経済的な理由で大学卒業まで学校に通えない、あるいは卒業できたとしても産業が発展していないために雇用が足りない、といった理由から大多数の人が自営業で収入を得ているそうですが、それはやはり安定した収入にはつながらないようです。

たとえ就職でき、きれいな一軒家を持っていても、水道水は衛生的に汚くて飲めない、電気のスイッチをいれないとシャワーのお湯が出ない、蚊帳がないとマラリアに感染するリスクがある、2~3日に一回の停電は当たり前、などといった生活環境を考えれば、水道水が飲める、お湯をためればいつでもお風呂に入れる、医療が発達している、電気もガスも常に使える、お金を稼ぎたいと思ったら仕事がすぐに見つかり収入を得られる、一日三食を毎日いただける、といった我々の生活は、当たり前でありながらもすごく幸せであることが容易におわかりいただけると思います。

タンザニアの人々が考える幸せとは

ですが、現地の人々が苦しそうで暗い雰囲気なのか、というと実はそうでもありません。

もちろん全員ではないですが、とても楽しそうでとにかく明るくて陽気な人の方がむしろ多い印象ように思えました。

というのも現地の人々の考え方として、困っている人を見かけたら、すぐ声をかけ、必要であれば小さなことでも何かサポートする、互いに支え合う気持ちと思いやりを持って実際に誰かの手助けをする、あるいは誰かの助けを受ける、特に何もなくてもとりあえずお話して仲良くなる、というものがあるようです。

普通のことのように思えますが、日本で果たしてこのようなことが、知らない人同士で日常的に起こりうるでしょうか。

他人に常に気を配り、円滑な交流によって幸福度を高めていく、それだけでも彼らにとっては十分幸せなのだそうです。

もちろん必要に応じて対価を支払うことはあれど、先進国の人々のようにとにかく何かに投資をして幸せを得ていくという価値観とはまた違った、別の新しい考え方に気づけたことが今回の一番の大きな学びとなりました。

毎日言い続けた「いただきます」と「ごちそうさま」

滞在中、ホストファミリーに日本人は自分一人しかいませんでしたが、それでも毎日言い続けた日本語があります。

それは、“いただきます”と“ごちそうさま”です。

もはや習慣化されていたので特に意識はしませんでしたが、日が経つにつれてだんだんと、作ってくれた人への感謝、毎日の食事、いただく命などへのありがたさはもちろんのこと、日本での当たり前が実は幸せであると気づいた分、自分の渡航を支えていただいた方々や協力してくれたボランティアの仲間、優しく接してくれた現地の人などへの感謝もやはり忘れてはならないと感じるようになりました。

日本語でしか表現できないこの言葉の本当の意味を、身をもって理解できたような気がします。

同時に、三週間のうちに交流していただいたすべての方は、自分にアフリカの価値観に基づく“幸せ”を教えてくれたような気がしました。

この経験を社会で活かしたい

今後の人生に役立てたいこととしては、まずひとつに自分が将来国際関係の仕事就職したときに、今回学んだことや感じたことを役立てるということです。

大学でこれからも培う知識、と考察力、そしてこの経験を生かしていきたいと思います。

もう一つは、今からでもできることとして、それらをSNSなどでいろんな人に日本以外の現状を知ってもらい、世界にも視野を向けてもらうことです。

日本で生活しているだけでは、自分たちの当たり前が世界では当たり前ではないということに気づくことが難しいはずです。

だからこそ、実際に経験を積んだ人間にはそのような使命があると考えています。

それをどう捉えるかは人それぞれですが、世界の多様性に気づいてもらうことが発信する上で一番重要であると思います。

これから参加する方へ

今後、Project Abroadに参加をしようと思っているみなさんには、ただボランティアとして活動するだけでなく、現地でしか体験できない出来事を、様々な視点から考察し、自分なりの新しい考えを見つけるきっかけにしてほしいです。

そのために必要なことは様々ですが、やはり一番重要なことはいかにたくさんの人とコミュニケーションを取れるかだと思います。

それにはもちろん英語でコミュニケーションを取ることが大切になってきます。

渡航前は使えそうなフレーズを覚え、You Tubeで耳を慣らすなど、とにかく英語の勉強を重ねてください。

自分は英語を聞き取るのがとても苦手だったので、現地では本当に苦労しました。

もし英語が上手に話せなくても、人と接触しようという心構えさえあれば、大丈夫です。

また英語以外にも、初めて飛行機に乗るがちゃんとタンザニアへたどり着けるか、無事に入国できるか、ホームシックにならないかなど、渡航するにあたって不安なことは実はたくさんありました。

そしてそれは、これからの参加者の方も抱える悩みだと思います。

ですが、思い切って一度行ってみてください。

人生を180度変える本当に良い経験になることに間違いありません。

ここまで実りある三週間は本当に初めてでした。

充実しすぎて帰国時には、また絶対タンザニアに戻ってくると、マサイスクールやホストファミリー、さらには初対面の空港職員の方にまで約束しました。

ともにホームステイをした海外の仲間とも、互いの国に行くときは絶対会おうと約束しました。

それくらい新しい出会いと経験が得られます。

必ず人生を変えるきっかけにできます。

とても長くなってしまいましたが、この体験談がこれから参加されるみなさんのお役に立てることを願っています。

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タンザニアで教育 鈴木純伍

この体験談は、主観に基づいて綴られています。

その時の現地の需要や活動の進捗状況、参加時期、参加期間、天候などによって得られる経験が異なりますので、あらかじめご了承ください。

ご不明な点は、お気軽にお問い合わせください。