人生観のベースとなる経験を積むために
「開発途上国の貧困層と呼ばれる人達は、どんな思いでどんな生活をしているのだろう。彼らのために何ができるのだろう」
それまで開発途上国に関心を持ちながらも観光でしか行ったことがなく、転職の合間の休暇を利用して現地で何かしらの活動に携わりたいと思ったことがプロジェクトアブロードの門を叩いたきっかけでした。
海外ボランティア・インターンを提供する機関は他にもありましたが、対象国と対象プログラムの豊富さ、世界各国から人が集まる環境に惹かれ、ここにしようと即座に決心したことを覚えています。
魅力的なプログラムが多数ある中で、現地の人々の生活に直接触れられるものに携わりたいと思い、ビジネス支援を通じて接触機会の多いマイクロファイナンス・プログラムを選びました。
金融分野は全くの未経験でしたが、それでも期間中の活動を十分に果たすことができ、やりたいことを優先した選択で間違いはありませんでした。
フィールドワークを通じて触れた現地のリアルな生活
カンボジアでは2週間、Khemaraという現地のNGOと協業する形でプログラムに取り組みました。
活動内容としては、債務候補者に対するビジネスプランのヒアリング、現地スタッフや他のメンバーとの債務者選定のためのディスカッション、債務者向けのビジネストレーニングの開催、債務者宅訪問によるローン返済金の回収やビジネスの状況確認などを行いました。
NGOのオフィスでもデスクワークを行いますが、現地の人々が住むところに訪れて生活やビジネスを見るのに十分な時間を割くことができ、「やりたかったことはこれだ!」と毎日が新鮮で貴重な経験の連続でした。
プロジェクトで提供するローンの対象となる人の多くは、食べ物や飲み物の販売業などのビジネスを個人で行っており、一日当たりの利益10~20USドルで3~5人くらいの家族を養っています。
この利益のほとんどは生活費に充てられてしまうため、材料の買い増しや備品の購入、新規ビジネスの初期投資のための資金がほとんどないような状況です。
新規債務者への融資は120USドルに設定されているのですが、ある人が保冷用備品を買うのに借りる資金の半分を使うと話していたことが印象に残っており、マイクロファイナンスの意義について実体験を通じて考える良い機会でした。
活動を行う上で他のメンバーと話し合うことが多い点もマイクロファイナンス・プログラムの魅力の一つだと思います。
私が参加していた際のメンバーは、ベルギー人、デンマーク人、スウェーデン人、イタリア人などと実に多様でした。
債務者を選定するときに「そのビジネスプランは曖昧過ぎないか」「その人はローンを本当に必要としているのか」「詳細に再度ヒアリングすべきでは」などと議論し、国や文化は違っても同じ目標に向かって気持ちを一つに協業できるのだという貴重な経験になりました。
多様な人が集まる生活環境
私が滞在していたアパートには、マイクロファイナンスだけではなくチャイルドケアや公衆衛生のプログラムに参加している人も滞在しており、欧州勢が多いものの世界各国から人が集まる刺激的な環境でした。
滞在人数は平均15~20名で人の入れ替わりも頻繁でしたが、交流するのが好きな人ばかりで、自由時間は皆で市内観光に出かけたり、レストランやバーに行ったり、週末も有志でアンコールワットまで旅行をしたりと、プログラムの活動以外も非常に充実した時間を過ごしていました。
生活環境はもともと気にしていませんでしたが、様々な国のライフスタイルや文化を知り、英語での雑談力(分からない単語や固有名詞、会話スピードの速さに苦労しました…)を伸ばす絶好の機会であり、アパート等での他の参加者との共同生活はこれから参加される方に強くオススメできるポイントです。
活動を経て思いを新たに
現地の人々の生活・経済的状況・価値観を知りたい、英語環境で様々なバックグラウンドの人と一緒に働きたい、という期待を抱いてプログラムに飛び込みましたが、想像以上にリアルで密度の濃い経験ができて本当に良い決断でした。
正直、このプログラムによって、ファイナンスなどの特定のハードスキルが身に付くことは想定しにくいと思います。
しかし、現地の人やモノに触れたときの生々しい感覚や気づき、自分の考え方や価値観の変化、国境を超えた連帯感や貢献意欲は、ハードスキルを身に付ける以上の価値があったと確信しています。
この経験を通じて、日本だけではなく世界中の人々がもっと幸せになれる社会づくりに貢献したい、と改めて思うようになりました。
今後は日本国内でコンサルティングの仕事をする予定ですが、国際的に貢献できるチャンスを自ら作り、活かすことを人生目標にチャレンジしていきたいと考えています。
カンボジアにも、いつかまた戻ってきたいですね。
最後になりましたが、貴重な機会と多大なご支援を下さったプロジェクトアブロード関係者の皆様に心から感謝を申し上げます。
この体験談は、主観に基づいて綴られています。
その時の現地の需要や活動の進捗状況、参加時期、参加期間、天候などによって得られる経験が異なりますので、あらかじめご了承ください。
ご不明な点は、お気軽にお問い合わせください。