コロナ禍でも環境問題に対するアクションを
高校1年生の時、学校でSDGsを中心とした世界のあらゆる問題について学ぶ授業があり、その時から環境問題に強い興味を持っていた。
当初は大量のプラスチックごみ問題やサンゴ礁の白化といった海洋問題に目が向いていたが、生態系の破壊による動物の個体数の減少も同じく深刻な状況にあることを知った。
コロナ禍ではあったが、環境問題の現状を改善するためには行動を起こし続ける必要があると考え、このような状況下でもケニアでのボランティア活動に参加することを決めた。
いつもと違う海外への渡航
感染症対策には万全を期してケニアへ渡航した。
私はドイツのフランクフルト空港を経由したが、日本・ドイツ間の乗客は少なかったものの、ドイツ・ケニア間では機内に空席がないほど乗客が多かった。
ところどころで検温や消毒を求められ、機内では、食事中以外は常にマスクを着用するようアナウンスがあった。
出国前にPCR検査(唾液採取)を受け英語の陰性証明書を取得し、飛行機の搭乗開始前にパスポート、ビザとともに搭乗口で提示した。
また、オンライン上のヘルスチェックシートに、英語で国籍、パスポート情報、航空便名や座席番号、健康状態などを登録する必要があった。
登録が完了したら、登録したメールアドレスに現地の保健所スタッフからQRコードが届くので、飛行機を降りて入国審査を受ける前に、保健所スタッフに陰性証明書を提示し、QRコードを読み取ってもらう。
QRコードが届かない場合は電話番号から確認されるようだった。
帰国の際にも現地の病院で陰性証明書を取得した。空港の中に入る時や飛行機搭乗前に提示を求められた。
環境保護ボランティアとして
主な活動内容
- 外来植物の駆除
- ケニア料理(チャパティ、マンダジ)教室
- 密猟者の罠の駆除
- スワヒリ語レッスン
- キリンの観察
キリンの左右の姿を撮影し、性別ごとの個体数、ロケーション(GPS)を記載して観察データを作成する。
過去に観察されたキリンにはMoses、Jomo、Sanaeといった名前がつけられているため、模様で彼らを判別し特定する。
石壁の修復
日本の城壁のように石を積み上げて作った石壁が崩れているところを修復する。
パズルのような感覚で、うまく積み上げないと壁が崩壊し重たい石が落ちてくるので慎重に行う必要がある。
地面に転がっている石の裏には大量のアリが群がっていることがあるので、心の準備を。
ジャングル散策
ジャングルの中を一時間ほど散策した。様々な植物や、動物が通った跡、動物の骨や巣(穴)を観察した。
地面には所々にくぼみがあり、鋭い棘を持つ木々が生い茂っているため、周囲に注意して歩く必要があった。
棘は地面にもたくさん落ちており靴の裏にささるため、足を保護できるような靴下や厚底の靴がおすすめ。
コウモリの生息する洞窟探検
洞窟の奥に進むと真っ暗になり、壁、地面はチョークの粉のような柔らかい素材でできていた。
コウモリが天井からぶらさがっている様子を間近に見ることができた。
サル、水鳥のカウント
サルは群れごとに、水鳥は種類ごとに数を数える。
サルは木の上の方で生活しており、観察する車からは遠く離れているため双眼鏡が必須。
水鳥を観察した湖には大量のフラミンゴが生息しており、カラフルな水鳥をたくさん見ることができる。
週末アクティビティ
午前中は14kmコースでサイクリングした。
道が悪く、タイヤが砂に埋もれて進みにくい場所もあった。
ケニアは標高が高いため空気が薄く、自転車は現地の方々の体格に合わせた大きめのものなので、小柄な日本人には少しハード。
午後は活動場所とは異なる自然公園でボートに乗った。
その後レストランにて昼食。
教会訪問
クリスマスには現地の教会を訪問した。
歌っていた聖歌もアフリカンだった。
式の途中で参加者にはスピーチが求められた。
ケニアでの現地生活
食事
食事は毎日三食提供される。
朝食はフルーツやパン、クッキーなど、昼食・夕食はチャパティ、マカロニ、ライス、パスタ、マッシュポテトがメインでとても美味しい。
フルーツはマンゴー、パイナップル、オレンジ、ポーポー、アボカドなど。
アレルギーや宗教による食事制限への対応もしていただける。
水事情
トイレは水洗で、シャワーからは温水がでる。
水道水は飲んではいけないため、滞在先のタンク内の水を利用できる。
水道水で洗った生野菜にも注意が必要。
歯磨きも水道水は使わないほうがよい。
洗濯は手洗いだが、ハウスキーパーの方にお願いすることもできる。
道中の砂ぼこりや活動で泥だらけになることもあるので、洗濯石鹸や重曹を持っていくことをおすすめする。
防虫策/予防接種
ジャングルや草木が生い茂った場所での活動もあるため、虫よけは効力の強いもの(私は感染症科医師よりディート30%のものを推奨された)が必須。
日中部屋は換気のため開放されるが、網戸はないため実に多様な虫が侵入してくる。
ベッドには蚊帳がセットされているため、夜間に活動するマラリアを媒介する蚊を心配する必要はないが、スキンガードタイプだけでなく、空間に噴霧できるタイプの虫よけがあるとよい(ただし、殺虫剤は空港の荷物検査で没収される)。
予防接種は、黄熱病、狂犬病、腸チフス、A型肝炎を受け、マラリアの予防薬を服用した。
インターネット環境
活動地に到着した翌日に町でSIMカードを購入したが、インターネットは利用できず(原因不明)、活動でオフィスを訪れた時のみWi-Fiを利用させていただいた。
セキュリティ
部屋や棚には鍵がかからなかったため、貴重品が入っているバッグは常に携帯した。
スーツケースには鍵をかけ、金庫代わりにした。
移動
自然保護区内では、サファリカーに乗って移動するが、道は舗装されておらず激しく揺れる。
砂ぼこりも舞い、雨が降った後は車がスタックし、頭上から泥が降ってくることも。
ジャングルの中を進む時には鋭いとげを持った植物の枝が窓から入ってくるので、移動中も周囲の状況に気を配る必要がある。
現地の人々
とても明るく気さくな方が多い。自然保護区内で人に会うと、挨拶をしたり手を振ったりしてくれる。活動中にマサイ族の方とお話する機会も。
実際に環境保護の活動に従事している方々とも交流ができ、インターネットでは得られない、多様な生物が生息するケニアならではの環境に関する情報を得られる。
その他
道端で「Give me a sweet!」と要求してくる子どもたちに遭遇。
彼らと英語で会話するのは困難だった。
また、マサイマーケットでの買い物では、お店の商品に値札が貼られておらず、値段交渉をする必要があった。
ケニアでの体験を通して
コロナ禍における海外への渡航には賛否両論あり、変わりゆく国の感染症への措置の中で無事に帰国できるかどうかという不安もあった。
しかし、様々な活動がオンラインでの開催になる中で、実際に現地へ足を運び、自分の目で現状を捉えることの大切さを改めて実感した。
やはり参加者は少なく、イギリス人の女の子と2人での活動になったが、少人数だからこそより早く環境に慣れることができたと思う。
日本にいては決して体験することのできない活動を通して、異文化体験はもちろん、物事に対する考え方の違いや気持ちの余裕を学び、どんなことにも動じない強靭なメンタルを手に入れることができた。
太古の昔、人間と動物は互いの存在に敬意を払い共存していた。
今日、人間の業による環境破壊が糾弾される状況で、ケニアでは雄大な自然環境で動物の多様性が守られている。
地球の営みを肌で感じる中で、人間は地球に生きる動物としてどうあるべきかということについて考えさせられると共に、環境保護に対する新しいアプローチの視点を得ることができた。
これから参加する高校生へ
ケニアでの生活は日本と大きく異なる。
異文化を受け入れ順応できるだけの寛容さがなければ、活動から得られる学びは半減する。
お互いに対等な立場に立って相手を尊重することを忘れずに感動的な体験をしてほしい。
この体験談は、主観に基づいて綴られています。
その時の現地の需要や活動の進捗状況、参加時期、参加期間、天候などによって得られる経験が異なりますので、あらかじめご了承ください。
ご不明な点は、お気軽にお問い合わせください。