夢を追って

私は発展途上国の現状をこの目で見たいと思い、高校1年生の夏にProjectsAbroadのチャイルドケアのプログラムを用いてカンボジアで3週間活動しました。

当時から医師を志していましたが、現地の人たちとより関わりたいと考え、都市郊外にある小学校で英語を教えるという活動に参加していました。

そしてそこで知的障がいがある女の子と出会いました。

その子が周りの生徒だけでなく先生からもあまりよい扱いを受けておらず、私は一種の違和感のようなものを感じました。

日本でも障がいがある人々に対する心のバリアフリーは十分浸透しているとは言えない中で、発展途上国に住む障がいがある人たちはもっと生きづらいのではないか。

そのような思いから発展途上国に住む障がいがある人たちを医療面から救いたいという夢が出来ました。

そこから5年の月日が経ち、医学生になった私は一度発展途上国の医療や障がい者福祉をこの目で見て、障がいがある人たちに将来どのような医療を届けたいのかをもう一度よく考えたいと思いました。

そこでProjectsAbroadの医療インターンのプログラムへの参加を決めました。

1週間から参加可能なこと、南アジアに興味があったことから活動国はネパールに決めました。

私の渡航期間は1週間で活動できる日は5日しか取れなかったため、5日間で最大限のことを吸収できるよう、渡航までは現地で何を見て何を学びたいのかを明確にし、医療英単語を詰め込みました。

短期だからこそ積極的に

現地ではカトマンズにあるAlka hospitalとPatan Community Based Rehabilitation Organization で活動を行いました。

Alka hospitalは中規模の病院で、診療科もかなり充実していました。

病院全体の待合室は屋根があるものの外と直接つながっており、病院そのものの敷居は低く感じました。

また一つの大きな建物に多くの診療科が集まっているわけではなく、複数の小さな建物にそれぞれ2~3つの診療科が入っており、病院の敷地は広かったです。

Alka hospitalでは3日間活動しました。

はじめは活動期間が短いこともあり、1つの診療科のみに集中しようと考えていましたが、院長先生のご提案もあり、整形外科・小児科・救急科を見学することになりました。

また、日本でのProjectsAbroadのオリエンテーション時に自分からアクションを起こさないと何も学べない、積極的に質問する必要がある、というアドバイスを頂いていたので、分からないことは何でもすぐに聞こう!と意気込みました。

初日は整形外科

初日は整形外科を見学しました。

診察室はとてもシンプルで、問診用のソファ・ベッドとドクター用の椅子とテーブルがあるだけでした。

外科的処置をするための器具などはあまり見当たりませんでした。

医師と看護師が一人ずつおり、看護師は主に患者の簡単な記録(性別、名前、その日何人目の患者か、など)をしていました。

彼らに挨拶をした後、たくさん質問をしようと思い、医師に最も多い症例は何かを尋ねましたが、忙しかったのか後で答えるという風におっしゃったので、代わりに看護師の方がOsteoarthritis が多いという風に答えて下さりました。

その後近くにあったOsteoarthritisのポスターで勉強しているうちに医師は電話を始め、看護師は席を外したので質問をしたくてもできない、という状況が2時間続き、その日の見学は終了しました。

患者も3名ほどで、問診と触診のみでした。

現地の医療が見たいと思って病院の見学に来たのに、このままでは何も得られず帰国することになるのではないか、とその日は帰ってから不安でいっぱいでした。

今回の活動は完全に単独行動だったので、私の細かい活動内容についてコーディネーターは知りませんでした。

そのため、コーディネーターに活動が十分にできなかったことを報告すると、病院側との調整をしてくれました。

また、自分は何のためにネパールに来たのかをもう一度見つめなおしました。

医療について学ぶことももちろん目的の一つだけれど、それは日本でも出来ること。

それよりも現地の人たちと実際に触れあうこと、日本との医療の違いを見つけることが目的なのだと考え、それを意識しながら次の日からの活動に臨むことにしました。

2日目は小児科

2日目は小児科を見学しました。小児科は患者が途絶えることなく、とても多くの症例を見ることが出来ました。

主に発熱の患者が多かったです。

小児科の医師は、どのような病気の患者だったのかとその病気の関連事項について詳しく教えてくれました。

驚いたことに、ネパールでは中学校以降の学習は英語で行うらしく、医学も英語で学ぶようでした。

そのため一緒に見学をしていた医療系の学生も英語で書かれた教科書を広げており、医師からのレクチャーも英語で行われました。

日本で医学英語の勉強をしてきたつもりでしたが、現地の学生には及ばず、とても悔しかったです。

海外で働くには医療英語の知識が必須になるということを身をもって再認識した瞬間でした。

日本に帰ってから、普段の学習に英語を取り入れて知識量を増やそうと感じました。

3日目は救急科

3日目は救急科を見学しました。

救急科は、2日間見てきた診療科とは違って医師の数も看護師の数も多かったです。

Zone red, yellow, greenの3種類の病床があり、全部で7床でした。

常に患者がいる状態で、腹痛を訴える患者が多く、交通事故などによる外傷は予想していたよりも少なかったです。

日本の医療と大きく違ったのは、治療に使う薬は患者の家族が看護師に頼まれたものを買い、それを治療の部屋に持ってきてその薬を使うという制度です。

救急の現場では急を要する場面も多いため、とても不効率に感じました。

どうしてそのようなシステムをとっているのか、日本との違いがとても興味深かったです。

また、救急科の見学では指導医の先生がとても丁寧に患者の“SOCRATES”について、カルテを書きながら教えてくださいました。

現地の医学生や、他のドクターともたくさん話すことが出来、とてもいい刺激をもらいました。

病院での活動から学んだ自分がやりたいこと

病院での見学は総じてとても勉強になるものばかりで、都市部の病院ということもあり、医療は予想していたよりも充実しているなという風に感じました。

そのため、自分が将来発展途上国の医療に関わりたいと考えたときに、本当にそこでは医療の援助が必要とされているのかをよく考える必要があると同時に、自分が将来やりたいのは発展途上国の医療支援ではなく医療“協力”、現地の医療関係者とともにその国の医療に関わることなのだと感じました。

エネルギーに溢れていた障がい者福祉施設 

私は病院の他にも障がい者福祉の施設にも興味があったため、現地コーディネーターにお願いをしてPatan Community Based Rehabilitation Organization(PCBR)へ2日間訪問しました。

そこでは知的障がいなどの障がいがある人たちが学ぶ学校のような場所で、私は算数や英語を教えました。

私は障がい者支援に興味がある一方で、実際に知的障がいがある方とコミュニケーションをとることは初めてで、言語が通じない不安もあり、最初はとても緊張していました。

しかし、彼らはとてもフレンドリーで明るくて、すぐに打ち解けることが出来ました。

2日目にはまた来てくれたの!という反応で出迎えてくれて、とても嬉しかったのを覚えています。

勉強を教えるのはとても単純な作業でしたが、自分自身も楽しんで彼らと学ぶことが出来ました。やはり自分は障がいの有無に関わらず、子供たちと関わることが好きなのだと感じました。

とてもエネルギーをもらえた2日間でした。

一方で、今回実際に知的障がいがある人たちと関わり、彼らが学ぶところを見たことで、彼らをどのように医療面から支えるべきなのか、と自分の夢を考え直すきっかけにもなりました。

知的障がいの福祉に関しては社会的支援に依存するところが大きく、医療的支援はあまり充実していないのではないかと感じ、“彼らを生きやすくするような治療”にフォーカスを当てた医療のかたちを模索していきたいという風に感じました。

大好きだったネパール生活

現地での生活はとても充実していて、朝6時にニワトリの鳴き声とともに目が覚め、8時に朝食、10時から3時まで活動した後に元気があればタクシーに乗って観光、17時に帰ってシャワーを浴び、20時に夕食、22時には寝るというとても健康的な生活でした。

ホストファミリーはとてもいい方で、いつも気にかけてくださいました。

ご飯もとてもおいしくて、毎日ルームメイトときれいに完食していたらだんだんと量が多くなっていったのもいい思い出です。

ホストファミリーのおいしいご飯のおかげでネパール料理が大好きになりました!

ルームメイトはたまたま日本人の女の子で、彼女は3か月間ネパールに滞在していたので、多くのことを教えてもらいました。

他にもホストファミリー家の屋上で夕陽を見ながらお互いの夢について語り合うなど、たった5日間だけでしたが、とてもいい関係を築くことが出来ました。

ネパールで出会えてよかった人たちのうちの一人です。

おいしいネパール料理、素敵なホストファミリーとルームメイト、ティー文化、きれいな夕日のおかげでネパールでは充実したスローライフを送ることができ、一度も日本が恋しくならなかったほどネパールでの生活が大好きだったし、帰りの車では寂しさのあまり一人で泣いてしまいました。

また絶対帰ってきたい場所になりました!

この経験の収穫

このプログラムを通して、参加する前の目標であった「発展途上国の医療の現状を見る」、「現地で障害がある人たちと関わる」ことができ、自分の夢についてもう一度よく考える良いきっかけとなりました。

発展途上国に住む障がいがある人たちが生きやすくなるように日本で児童精神科などについて学び、そこで得た知識を医療協力としてネパールをはじめとする発展途上国に還元したいと感じました。

また、一人で知らない土地を歩き回り、たくさんの人と関わったことで自分の殻を破って新しい世界に出ることが出来たように感じました。

これから参加する方へ

百聞は一見に如かず!

この体験談を読んで少しでもネパールをはじめとした発展途上国の医療を見てみたいと思った方はぜひ行ってみてほしいです。

そこには自分が理想とする医療はないかもしれません。

しかしその経験は必ずあなたの今後の視野を広げてくれると思います。

私にとってこの経験は、この先お守りのような存在になってくれると思います。

Where there is a will, there is a way!

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ネパールで医療 吉田萌

この体験談は、主観に基づいて綴られています。

その時の現地の需要や活動の進捗状況、参加時期、参加期間、天候などによって得られる経験が異なりますので、あらかじめご了承ください。

ご不明な点は、お気軽にお問い合わせください。