思い切って踏み込んだ日本語教育ボランティア
2018年、酷暑の行方も定まらない真夏の日本からメキシコ・グアダラハラへ。
一か月に渡り、日本語教育ボランティアの立場で参加し、活動してきました。
滞在先のグアダラハラにある、公立の大学CUCEA(Centro Universitario de Ciencias Economico Administrativas)で、日本語学習のサポ-トが主な役割。
日々の活動の中での出来事、プログラムの進め方、それによる自分なりの印象などについて、述べてみたいと思います。
滞在中は、現地の皆さんの連携のおかげで安全に良い方向へと事が進み、ひたすら活動に専念することが出来ました。
これも一重にチ-ムスタッフの皆さんの適切なアドバイスと援助の賜物です。関係の方々、本当にお世話になりました。心よりお礼をお伝えします。
プロジェクトアブロ-ドは冊子で偶然見かけましたが、そこに立つ自分の姿が浮かび、未知の可能性に自身を託してみたい気がしました。決断までに時間はかかりませんでした。また、迷っている余裕もない、人生後半の最終折り返しにいましたから。
日本語教育ボランティアの分野を選んだ理由の一つには、人生の節目に、自身の体力と気力を確認したい気持ちがありました。
また、自分に向く分野で、それが必要とされるのであれば尽力したいこと。他言語にはない日本語独自の、心に響く表現の美しさや文字の成り立ちなど、日本語の多くの魅力を、転換期ともいえる今の時代に一つでも多く届けたい、という日頃からの思いがありました。
日本を伝える喜び
月曜日から木曜日にかけては、担当M先生によるクラスごとのカリキュラムに沿ってクラスに一緒に参加します。
あくまでもアシストの立場ですが、時にはクラスを任されることもあり、その場合はなるべく日常生活で役立つ単語や語句などを取り上げて、実践で生かせるよう、分かりやすい表現を使うようにしました。
渡航前に新聞の切り抜き、カラ-刷りの広告、写真、フラッシュカ-ドや幼児向けの絵本も教材に役立つ機会がありました。学習者にとって特に、助詞、接続詞、形容詞は困難と思われます。
余談ですが、日本の指導書に記載されている文法とは方法の異なる場合もあるように感じました。実際、ルーツの異なる学習者にとって、導入法は色々あって良いのではと思います。
バスの中で数人と日本語会話練習をしながら帰宅したこともあります。
また、日本語の試験が近いある日は、授業の後、熱心な女子学生と二人、図書室で学習することもありました。
皆、学びにとても熱心です。その気持ちに添いながら、必要とされる立場にいる今を幸せに思いました。情熱は、様々な困難を可能にする鍵です。
金曜日は、希望してワ-クショップを3回実施することになりました。
<カリグラフィーの日><日本食事情と海苔巻き><折り紙遊びと日本語ゲ-ム>。
どれをとっても私には愛着があり、親しめる作業でしたから、準備の段階からとても楽しみでした。
食材の調達や、炊飯器に至るまで、現地のプロジェクトアブロードスタッフの皆さんのチームワ-クにすっかりお世話になりました。
当日は、参加者(各20名位)の溢れる笑顔に安堵し、ここでも伝える喜びを直に感じました。
メキシコでの生活の楽しみ
CUCEAへは終日市内バス(Camión)を利用します。
曜日によっては、まだ暗いうちに家をでるため、バス乗車に慣れるまで結構時間がかかりました。
バス停はなく、乗車は手で合図し、定時刻もありません。時間には余裕を持つのが賢明と知りました。
乗車するうち、車内ではドライバ-と乗降者に優しいル-ルが成り立っていることにも気が付きました。生活者の目線であればこそです。
ステイ先のお宅は、中心街から少し離れた静かな環境で、到着前に一人部屋を希望していました。
50代のご夫婦はとても円満で親身。活動先から帰宅する私を待って昼食を共にし、その日の出来事を聞いてくれたり、お互いの話題にも事欠かずで、私自身はその笑顔と対応に癒され、励まされていました。
メキシコの、最も一般的な家庭の暮らしぶりを間近で知ることが出来たのは幸いでした。冷蔵庫に収まる食材からも、世の中の景気が見て取れます。
食事は自分でも作る機会が何度かあり、それは気分転換にもなり、お互いを深く知る機会にもなりました。
飲料水に関しては、特に配慮が大切です。常に留意しながら自己管理が不可欠。それでも体調を崩したときは、とにかく早めに持参の薬か、もしくは近くの薬局で調合してもらうことです。ステイ先の家族に良く話しておくことが最優先でしょう。(自身の体験から)
活動時期がちょうど雨期であり、連日にかけて、夜半か明け方、時には夕方になると短時間の激しい雨が降りました。ひとたび雨にあった後の道路はすでに浸水状態で、しばらく歩くことも困難です。
そのため、私は冠水した汚水まみれの道路を、靴なしで歩くこともありましたが、後でこの判断はひざ下にかけて頑固な吹き出物の原因ともなっていました。
ある週末はチャパラ湖に近い街(Ajijic)に住む知人の邸宅に招かれて、一晩過ごしました。彼女の提案で、翌日は10名のご近所の皆さんと共に<和食day>となりました。食事作りは私の役割で、彼女は白とブル-を基調にした見事なテ-ブルコ-ディネ-トを演出し、中庭にあるその一角は格別な空間に仕立て上がりました。
また、次の週末はバスツア-を予約してテキ-ラの工場と村を見学。或いは平日に出来なかったことを部屋で整理したり、近所のマ-ケットや書店に立ち寄ったりするするのも楽しみのひとつでした。
滞在先の家族にも色々な事情があります。お互いが気持ちに寄り添うことで、思いは一つに。自分に出来ることは、なるべく家族に負担を掛けないよう家事をこなす心がけも大切かと思います。
世界に貢献できる人になるために
初めてプロジェクトアブロードの情報を目にしたとき、まず年齢へのためらいがありました。
でも同時に活動の主旨や内容を読み進んでいくうち、海の向こうで必要とされる自分を思い浮かべる時、迷いはなくなっていました。
一か月間の活動を通して、当初の予想を大きく超えた沢山の<ご褒美>がもらえました。
それはまず、自身がすんなり受け入れてもらえたことへの嬉しい驚き。また、海外で出会えたもう一人の自分です。そこには今まで知らずに(眠っていた?)可能性に目覚めた自分がいました。
グアダラハラで芽生えた友情の数々、家族の温かさ、そして現地オフィスの皆さんの限りないサポ-トと励ましはこれからの道のりを生きる目標ともなります。
機会があれば、今後も<必要とする人たち>へ<必要とされる人>として受け入れられ、自分なりの貢献ができたらと思います。
そのためにも、健康こそは今後も一番の目標です。
この体験談は、主観に基づいて綴られています。
その時の現地の需要や活動の進捗状況、参加時期、参加期間、天候などによって得られる経験が異なりますので、あらかじめご了承ください。
ご不明な点は、お気軽にお問い合わせください。