こんにちは!今回はケニア視察を通して発見した、ウェブサイトにないプロジェクトの活動内容や背景を書きたいと思います。
このブログは、前回スタッフ渡航記~ケニア編~でご紹介したケニアに関する全体的な記事の続編です。
少しでもケニアの活動に興味をもってほしいと思います。
おすすめ①環境保護
ケニアのダントツお勧めプロジェクトはサバンナ環境保護プロジェクトです。
活動を通して内容を知れば知るほどその活動の目的や意義の理解が深まり、非常にやりがいを感じる活動ばかりでした。
携わった活動
- キリン調査
- ライオン調査
- 野鳥調査
- オナガザル調査
- 哺乳類の個体数調査
- 地域住民宅へのエコストーブ(かまど)の設置
キリン調査
保護区内のキリンの個体や群れを探し、雌雄の判別、個体数、どの位置で発見したかを記録し、模様が分かる確度から写真撮影を行います。
発見位置を記録し推移をデータ化することで、「この場所は出産でよく使われるエリア」「この地域は餌となる草木が豊富で子どもを育てやすいエリア」「この辺りはオスのみで構成されたグループが集まりやすいエリア」などの傾向が見えるようになります。
キリンの各個体には名前が付けられており、保護区内の資料の写真と比較しながら「個体○○をこのエリアで確認した」などの記録を作り、個体の移動経路などの集計を行っています。
また近年国際的な動物保護に関する学会でキリンの属性の分類が更新されたことから、保護区内に生息するキリンの種類(アミメキリン、マサイキリンなど)の確認と、各個体の分類作業が必要になり、これまで構築したデータの再編を行う必要が生じています。
キリンの調査を通して個体判別と生息数を把握することで、保護区内のキリンの分類を明確化することが可能になります。
ライオン調査
現在ソイサムブ保護区には3~4頭のライオンが生息しているとされています。
敷地が広大であるため発見は難しいですが、週に一度程度ライオンの調査活動が行われます。
この保護区の中には一般市民も生活しており、家畜がライオンに捕食されることがあります。
家畜は資産と同様とされていることから、ライオン対策に毒餌を撒く住民が現れました。
人間と動物の生活圏が重なることで利害が対立する構図になってしまっています。
ライオンの生息地域や行動パターンや捕食対象の傾向を観察記録することで、人間とライオンの社会の棲み分けお互いが共存できる環境整備に向けた情報収集を行っています。
野鳥調査
ラムサール条約に登録された湖をいくつかのエリアに分け、そのエリアにいる野鳥の種類、個体数を判別、記録しています。
観測係と記録係に分かれ、野鳥図鑑を参照しながら双眼鏡で野鳥を判別し、野鳥名を記録係に伝えて記録を作成していきます。
ここで集められたデータは現地の野鳥保護協会やケニア政府の関係機関に共有され湖の保全に活用される他、蓄積されたデータから渡り鳥や固有種の野鳥の個体数の推移をモニタリングしています。
哺乳類の個体数調査
ソイサムブ保護区の面積は広大で、全ての動物の数を把握するのは困難と言えます。
そのため私たちの個体数調査では保護区を複数のエリアに分け、定期的に個体数の調査を行っています。
方法は、調査で使用する4WD車の進行方向に向かって左右にグループを分け、進行方向38kmに渡り直進します。
各グループは左右各200m圏内にいる哺乳類を”すべて”カウントし、動物名が書かれたリストに頭数を記録します。
この調査で判明した頭数から、記録した哺乳類が概ねどの地域に何頭いるかの推計値を算出することが活動目的になります。
オナガザル調査
ソイサムブ保護区内にある森林区画に生息するオナガザルをはじめとした哺乳類の調査を行います。
森林の中を低速で進みながら木々の動きを見極め、サルの場所を特定します。
食性が濃いので捕捉が非常に難しいですが、双眼鏡を使って雌雄、子どもの数を記録します。
同時にInterspecies(異種間事象)という、本来関わり合うはずのない動物の間の行動を観察します。
通常、動物同士はあまり交流をせず上手く棲み分けてお互い干渉せずに生息することが多いようですが、ヒトによる木の伐採(薪)により森林の面積が減少すると、野生動物の生息域が狭まり本来起こりにくいInterspeciesという現象が起こります。
例えばワシやタカはネズミなどの小動物を捕食しますが、森林が狭まり餌となる小動物が減少すると、オナガザルの子どもを捕食するようになるなどの事例が見られるようになりました。
動物の世界はそれぞれの種の活動により微妙なバランスが保たれていますが、ヒトの生活活動によりその微妙なバランスが崩れてしまう事があります。
このようなInterspeciesが見られるようになったことから少しでも森林の減少が遅くなるよう、下記のエコストーブの設置活動を行うようになりました。
地域住民宅へのエコストーブ(かまど)の設置
ケニアでは人口の85%にあたる人々が薪を燃やして炊事を行っているとされています。
日本のようにガスや電気を使って調理をする人口が全体の15%程度しか占めていません。
ソイサムブ保護区内にも地元の人々が生活し、学校に通い、仕事をしています。保護区内の家屋は質素で、やはり薪を使って火を起こして炊事を行っている家庭が大半です。
薪はお店などで入手できますが、価格高騰などの影響により保護区内の森林に無断で入り勝手に木を伐採する人が増加しています。
森林で伐採活動を行うと森林で暮らす動物の活動域が狭まり先述したInterspeciesが発生するほか、特定の木の葉のみ食べるキリンなどの草食動物の生息域が変わったり、他の人里に進出したりするなどの影響が出てきます。
野生動物が人里におりてきて畑を荒らす光景は日本でもよく報道され、獣害と言われています。
動物の生息域が伐採により減少しないため、Interspeciesの発生を抑止するために、私たちは保護区内の家屋にエコストーブと呼ばれる「かまど」を無料で設置する活動を行っています。
現地の家庭の炊事場を見ると吹きさらし(焚火)のような状態で火を焚く場合が多いのですが、この場合風の影響で燃焼が加速してしまい、常に木をくべなければなりません。
そうなると木の消費量が増大してしまいます。
エコストーブ(かまど)を設置すると風除け機能もあり、一定の薪で長時間高温を維持することができるため、一回の炊事で必要となる薪の量をかなり抑制することができるようになりました。
焚火をしていた人の中には煙により目や肺の疾患を持つ方も多かったですが、エコストーブ設置後は症状が緩和されたという方が増えたほか、ひと月に薪を購入する頻度が減ったという地元の方の声が寄せられているので、非常に効果が高い活動と言えます。
エコストーブの設置作業の頻度はその時の参加者の人数によりますが、私が視察した時点では週に1回程度、2班くらいに分かれて1日かけて4家屋/班ほど回って設置作業を行いました。
セメントを混ぜたりシャベルでセメントを家の中に運んだりするので、汚れてもいい服装を準備しておくとよいかもしれません。
おすすめ②医療インターンシップ
ケニアの医療インターンシップは医療を目指す高校生、医学生・看護学生、現役の医療関係者の方まで幅広く参加者を募集しています。
医療インターンシップでは複数の病院で活動を行っており、大規模総合病院、もう一つは地域特化型の総合病院などがあります。
今回、視察した2つの病院について紹介したいと思います。
結論から言うと、学生の方や英会話がそこまで得意でないという方は②地域特化型の総合病院、既に医療資格をお持ちで英会話が得意ということであれば①大規模総合病院がお勧めです。
①大規模総合病院
Nanyukiの中核を担う病院という事もあり、患者数も非常に多く携わる症例も多いと言えます。
外科病棟は交通事故で入院している人が多く、救急科を通った際は交通事故で重傷を負った患者さんの処置が行われている最中でした。
小児科に入院している子供も多く、その多くは栄養失調ということでした。
必ずしも食糧が不足しているわけではない(不足している場合もある)そうですが、保護者の方の栄養の知識がないケースが大半とのことで、保護者世代への栄養教育活動も病院主導で行っていました。
出産の件数も日本よりも多く、産科の入院病棟(80床程度)が全て埋まっているため、現在病棟を新たに建設することになったそうです。
この病院は非常に大規模で、地元の医学生や看護学生もインターン生として受け入れています。
それぞれの科も常に患者を受け入れている状況ですので、状況によりますが様々な症例に接することができると言えます。
ただ一つ難しさを挙げるとすると、医師や担当看護師が常に忙しく立ち回っている点です。
日本の病院でも同様かもしれませんが、効率よくご自身が何をしたいか、何を見たいか、どのような経験を積みたいかなどを効率よくはっきりと相手に伝えないと、あまり構ってもらえない可能性があると感じました。
この病院では主に主体的に行動できる資格をお持ちの方や、見たいものややりたい事が明確で、且つ英語でスムーズに担当者に共有できる方にお勧めの活動先と言えます。
それらが可能であれば、多くのものを吸収できる病院であると感じました。
②地域特化型の総合病院
この病院は①の病院と対照的で、常に緩やかな時間が流れている印象でした。
外来は混んでいるものの、救急などは次々運ばれてくるという状況ではなく、病院全体も鳥の鳴き声が聞こえるほど落ち着いた雰囲気でした。
医療インターンシップの参加者の目線で見た時、この緩やかな雰囲気はどのようにとらえる事ができるかと考えてみました。
この病院には2つの大きな特徴があると感じました。
- 医師に余裕があり、比較的すぐつかまえて話ができる
- 隣に産科・小児科専門病院があり、毎週水曜日に帝王切開の視察ができる
特に医師と話しやすい環境である点は医学生や看護学生にとって大きな魅力になるのではないかと思います。
また隣の病院で帝王切開が毎週水曜日にのみ行われおり(予約制)、希望があれば視察が可能です。
また小児科に特化していることからも産前・産後ケアや小児科に興味のある方にもお勧めです。
基本的な英会話ができるという前提になりますが、勤務している医師やメディカルオフィサーは若い世代で、権威的ではなく非常にフレンドリーでよく話を汲んでくれる人々でした。
もちろんご自身のやりたい事、見たい事などを明確に伝えられないと医師たちも掴み所がなく機会を作りにくくなってしまうので注意が必要ですが、ご自身の希望やチャレンジになるべく応えようとしてくれますし、難しい場合はオプション案などを提案してくれます。
この中で言葉のキャッチボールができ、ゆったりと流れる時間の中でどれだけの情報と機会を得るかを検討できる余裕があるという点をメリットと捉えて活動してほしいと思います。
中には常に忙しい方がよいと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、先述した主体性と英語力があれば食らいついていける可能性がありますが、じっくりと深く、自分の中で腹落ちできるまで医師と協議したり話をしたりできる環境の方が、日本から参加される医学生や看護学生には合っているのではないかと感じました。
ご自身の特性に合わせてどのような病院を希望されるか、ぜひアドバイザーにご相談ください。
ちなみにこの活動先は、高校生の参加者も大歓迎とのことで、実際に日本から通年医療インターンシップに参加する日本人高校生を受け入れた実績もあります。
おすすめ③教育・チャイルドケア
ケニアではスワヒリ語と英語が公用語とされていますが、特に公立校では英語教育がそこまで盛んとは言えません。
また教員の方のモチベーションが低いことが多い(人当たりはとてもいいのですが)という問題もあり、チャイルドケア・教育ボランティアの需要がまだまだあります。
教育、チャイルドケアプロジェクトもいくつか活動先がありますが、私が視察した公立の小学校を紹介したいと思います。
この学校は幼稚園~中学校までの一貫校です。
教育プロジェクトでは小学校、チャイルドケアプロジェクトは幼稚園で活動することとなります。
この学校の横にはスラム街が形成されており、生徒の大半がこの地区から通っています。
活動をしている限りはあまり貧しさを感じることはないかもしれませんが、彼らの家庭は3食を摂ることも大変というケースも多いそうです。
学校の長期休みは家計負担が増加することから、参加者がいる時期に限ってフードプログラム+ホリデースクールを開講しています。
長期休暇中の子ども達を集め、宿題のサポートの他英語の授業やスポーツアクティビティなどを行い、朝食と昼食を提供する子ども食堂のような活動を行います。
授業期間だけでなく休暇期間中もホリデースクールという形で活動に参加できますし、子ども達や学校からも必要とされている活動と言えますので、ぜひ参加を検討いただきたいと思います。
おわりに
先日ケニアを視察したばかりのスタッフ厳選!ケニアでおすすめ海外ボランティアプログラム3選をご紹介しました。
アフリカの中でも、ケニアは常に上位を争う人気の活動国です。
ケニアに関心をもった方は、ぜひケニアで海外ボランティアの専用ページもあわせてチェックしてみてくださいね!